歴史コラム

1936年


事業によるサステナビリティへの貢献
~化粧品事業創成の思い~

化粧品事業はこのSAVON DE SOIEからスタート(写真は復刻品)

当時の鐘紡社長 津田信吾は、1932年(昭和7年)頃から、輸出用高級石鹸の製造について構想を描いていました。それは、主力事業として手掛けていた絹紡績の副産物である蚕(カイコ)のサナギ油を利用して、輸出できるほどの品質の高い石鹸を製造販売することで、繭(まゆ)の価値を上げ、疲弊していた農村(養蚕農家)に利益を還元するということでした。
それまでサナギは生糸を採る工程で発生する悪臭が強く、廃棄するしかありませんでしたが、研究陣が足かけ3年をかけて脱臭漂白法を開発。純白の脂肪成分を精製することに成功しました。そして、欧米に輸出できるよう香料、押型、パッケージデザイン等にも工夫を加え、津田の構想から4年後の1936年(昭和11年)にサナギ油を主原料とする高級石鹸「SAVON DE SOIE(サボン・ド・ソワ/絹の石鹸)」が誕生したのです。

この「SAVON DE SOIE・3個入」を銀座の鐘紡サービス店で、輸出用(6円)と国内用(1円50銭)の両方を並べて販売したところ、高価格にもかかわらず、パッケージデザインに工夫を凝らした輸出用のほうが良く売れたそうです。

悲運にもその後まもなく戦時統制下となり、高級石鹸の輸出で養蚕農家を支援するという夢はついえましたが、肌に好影響を与える繭由来のシルク成分研究が進められたことは、その後の化粧品開発にとって強固な礎になりました。

事業活動を通じた社会への貢献を夢見た「SAVON DE SOIE」の誕生。それは、現在でいうところのサステナビリティ推進そのものでした。

輸出用 SAVON DE SOIE(当時の現品)
説明書は輸出先の言語で用意されました。

SAVON DE SOI(表面)
中央には、ローズの花があしらわれています。香料には、ロジクルローズ、オットーローズにミューゲが加えられていました。

SAVON DE SOI(裏面)
繭(まゆ)をかたどった図柄の中に、トレードマーク「KBK」が刻印されています。

SAVON DE SOI(裏面)
繭の端からは1本の絹糸が紡ぎだされています。

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