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教わる一つひとつが私の勇気のもとになる

「こんにちは。寒い中ご来店ありがとうございます」とお声がけすると、こちらをご覧になり黙ってうなずかれたお客さま。私はお話が苦手な方なのかと思い、いつも通りに話しかけていました。しばらくして、お客さまが耳を手で塞ぐジェスチャーをされたので、私はようやくその方の耳が不自由なことに気が付きました。身振り手振りを交え、はっきり口を動かして「申し訳ございませんでした」とお伝えし、すぐに紙とペンをお渡ししました。

その日、お客さまは普段からお使いのアイテムをご購入されましたが、私は初めての筆談での接客で、お客さまがお帰りになった後も「満足してくださっただろうか」と気が気ではありませんでした。

数カ月後、またそのお客さまがご来店くださり、私の顔を覚えていらしたようで笑顔でこちらにいらっしゃいました。筆談でお話をするうち、メイクアップアドバイスをリクエストいただいたので、うれしくなり、筆談とジェスチャーを交えながら一生懸命アドバイスをさせていただきました。するとどんどん表情が明るくなり、何度も笑顔を見せてくださるようになったお客さま。そして、

「教わる一つひとつが私の勇気のもとになるのよ」

と教えてくださいました。

お客さまは、筆談に夢中になっていた私の手元ではなく表情や口元をご覧になっていて、普段は耳が不自由だから迷惑ではないかと口にできなかったメイクアップアドバイスも勇気を出して頼んでみる気になったそうです。
そして、手話とともに「ありがとう」と言っていただきました。

しっかりと心を込めたアドバイスをすれば、言葉を交わさなくても目や表情から気持ちが伝わります。この経験は、今もずっと私の中にかけがえのないものとして残っています。

語り手 M.N./BC(ビューティカウンセラー)
チェーンドラッグ所属 BC歴9年