story35

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妻の体調が良くなったら一緒に来るからね

私が担当しているドラッグストアでは男性のお客さまのご来店も珍しくありません。その日も、何かをお探しの様子でカネボウコーナーを眺めている男性をお見かけしたので、お声がけしたところ、少し照れくさそうに「CMで見た化粧水を使ってみたいんですけど」とおっしゃいました。

お探しの商品の特長をひと通りご説明すると、そのお客さまは終始真剣な表情で聞いてくださり、ご紹介したスキンケア化粧品をすべてご購入くださいました。初めてお使いになるとのことでしたので、もう少し詳しく使い方をご説明しようとしましたが、帰りを急がれていらっしゃいました。そこで、「何かわからないことがありましたら、またいつでもお気軽にお申しつけください」と言葉を添えてお見送りしました。

数日後、再びご来店くださったそのお客さま。
「この前は親切に説明してくれようとしていたのにすまなかったね、どうも場違いな気がして、長居するのが恥ずかしくてね…」と切り出され、実は奥さまがご病気で手が不自由になってしまったこと、先日購入された化粧品は落ち込んでいる奥さまへのプレゼントだったこと、勇気をふり絞ってカネボウコーナーに足を踏み入れたことなどをお話しくださいました。
いまだに自由に手を動かせず、ご自分でうまくお手入れできない奥さまの姿を見て、先日私が添えた言葉を思い出し、使い方を聞きにいらしてくださったというのです。奥さまへの愛情がひしひしと感じられ、そのご主人さまの優しい思いにお応えできるよう精いっぱいお役に立ちたいと思いました。

そこで、お手入れのお手伝いをご主人がしてあげられるよう、ハンドデモンストレーションを見ていただいたり、アドバイスシートにコットンを使ったお手入れの手順などを書いて詳しく説明させていただいたりしました。

その一ヶ月後、奥さまがだいぶ回復されたことを知らせにわざわざお立ち寄りくださいました。「この年になって化粧品の使い方にこんなに詳しくなれるとは思わなかったよ」と苦笑されながら、

「妻の体調が良くなったら一緒に来るからね。」

と、おっしゃってくださいました。

それからしばらくして、そのお言葉通り、お二人そろってご来店くださるようになりました。ご主人さまは普段のお買い物では車で待たれることが多いのですが、奥さまがカネボウコーナーにいらっしゃるときだけは、車から降りて一緒に来てくださるのだそうです。仲良くご来店されるお二人の姿はまぶしいくらいに幸せそうです。

カネボウコーナーでは、このようなステキな出来事がたくさんあります。これからも一つひとつの出会いに感謝しながら、男性、女性にかかわらず全てのお客さまの思いに寄り添っていきたいと思っています。

語り手 M.O./BC(ビューティカウンセラー)
チェーンドラッグ所属 BC歴7年