story32

story32

辛そうにしていると思われないように化粧をするの

両手いっぱいに買い物袋を持ち、ハツラツとした表情で店頭のワゴンコーナーにお立ち寄りくださったお客さま。「こんにちは、なにかお探しでしたらお手伝いしましょうか」とお声がけしたことが、このお客さまとの出会いでした。

お荷物が重そうだったのでカウンセリングコーナーにご案内し、改めて自己紹介をして、お客さまのお名前を伺いました。その名字が珍しかったことから、ご出身やご家族のことへと話題が発展していきました。70代だというそのお客さまはご主人と二人暮らし。「毎日忙しいのよ」と明るい笑顔でおっしゃるものの、よくよく話を伺っていくと、週に3日はご自身のための病院通い、残りの日は入院されている寝たきりの息子さんのご看病をされているというのです。想像するに余りあるお客さまの大変な日々を思い、胸が詰まりました。
しかも、そんな状況にも関わらず、その方は丁寧にお手入れされた肌にきれいにメイクをしていらっしゃるのです。
思わず「お忙しい中でもきちんとされていて、本当に素晴らしいです!」と申し上げると、お客さまは、

「主人や息子から、辛そうにしていると思われないようにお化粧するのよ」

とおっしゃいました。妻として母として、大切な人を思う、その毅然としたお客さまの姿に、尊敬の気持ちでいっぱいになり、思わず涙してしまいました。そして、そんなお客さまのために少しでもお役に立てればと、時間の許す限り美容のアドバイスをさせていただきました。
最後には「こんなに良くしてくれてありがとう。いっぱい話も聞いてくれて嬉しかったわ」と言っていただき、お客さまはさらに笑顔になってお帰りになりました。
「化粧が家族の暮らしを支えている」。このとき改めて、化粧の力の奥深さを感じました。そして、そんな化粧に関われるビューティカウンセラーの仕事を続けてきて良かったと思いました。

語り手 E.T./BC(ビューティカウンセラー)
ドラッグストア課所属 BC歴16年