story19

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久しぶりに鏡をちゃんと見たわ

東日本大震災から一年半ほど経った頃、沿岸部の仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者の方に向けて、美容講習会を行いました。震災の影響でまだまだ大変な時期でしたが、私たちの予想を超えてたくさんの方が参加してくださいました。そして、思ったよりもみなさんがお元気そうで、少し安心しました。

講習会では、お肌のお手入れを実習していただくため、一人ひとりに鏡をご用意していました。お手入れを始めると「気持ちいいわね」「お肌がツルツルになってきたよ」と周りの方たちとのおしゃべりも進み、イキイキとした表情に。私たち講師とも打ち解けて、メイク方法についての質問が出たり、用意しておいたネイルカラーを試されたりと、お化粧を楽しみたいという気持ちが自然とあふれてきたようでした。 その中で、熱心に鏡をのぞき込んでいらっしゃった50代くらいの方が、

「久しぶりに鏡をちゃんと見たわ」

とお肌の感触を手で確かめながら、うれしそうにおっしゃいました。
どういうことかと思いお話をうかがうと、「震災後はゆっくり鏡を見る心のゆとりがなくて、お手入れをしようという気持ちになれなかったの。でも、今日この講習会に参加して、お肌が生き返っていくのを感じたら元気が出てきたわ」とのこと。そして、「これからは毎日鏡をみて、教えてもらったお手入れをしてみるね」と、とても晴れやかな表情で答えてくださいました。

講習会のゆったりした時間の流れの中で自分の顏に向き合えたことで、きれいでありたいという気持ちを取り戻されたのだと思いました。これからお肌のお手入れをするたびに、みなさんの心が少しずつ癒されていくことを願いました。

語り手 Y.Y.
講師